本年度は、没水式水中翼を備える小動力小型船舶が、海上を現実に航走する際、波浪、風、うねり、船体重心の移動等の各種不安定要素に対してどのような挙動をするのか、そして水中翼列のどのような特性がそれらとどう関わるのかを明らかにするために、試作船として太陽エネルギーを動力源とするソーラーボ-トを制作・開発した。そして電気特性、推進特性を含めた総合的なシステムの中で、没水式水中翼の流体力学的特性を明らかにすることを目指した。 ソーラーボ-トでは、太陽エネルギーを如何に効率よく利用し、余分なエネルギーをバッテリ-に蓄えることができるかが開発の大きいポイントになってくる。太陽電池とバッテリ-とモーターが並列に繋がれるため、回路中に電流を制御するコントローラーが必要になる。特に、太陽電池からの出力電流をコントロールするMPPTの設定が最も重要になる。バッテリ-からの逆流を防ぐために、MPPT側の電圧設定値は常にバッテリ-端子間電圧より高くなくてはならないが、最適値をはずすと、バッテリ-を節約するために出力を絞ると、太陽電池からの出力も減ってしまう等の不具合が生じることが分かった。結局、常にバッテリ-の端子間電圧から1、2V高い電圧で設定すれば最も効率よく電力を取り出せることが分かった。このような開発の結果、安定した出力性能が得られるようになった。 続いて、翼弦長が同じで面積が異なる水中翼列を4種類用意して、特に喫水が推進力に及ぼす影響、及び船体の動揺特性について調べた。その結果喫水が浅すぎると、揚力が急激に減少してしまい、効率が落ちること、前翼による後流の乱れが大きくなり後翼の効率も悪くなること、そしてロールに対する安定性も悪くなり、予想以上に大きい翼面積が必要になること等が分かった。
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