従来より大規模でかつ複雑な形状の地下構造物では、その一部に引張応力が作用するおそれがある。そのため、安全に地下構造物を建設するためには、岩石の引張破壊過程での特性が重要となる。 まず本研究では、サーボ試験機により6種類の岩石の引張試験を行った。完全応力-歪曲線を得る際、除荷・載荷を行い、コンプライアンスと非弾性歪を求めた。その結果、引張荷重下での完全応力-歪曲線と圧縮荷重下での完全応力-歪曲線とはほぼ同様であることがわかった。亀裂長と関係が深い、コンプライアンスは載荷とともに増大したが、強度破壊点以降での増大が目立った。他方、プロセスゾーンと関係が深いと考えられる非弾性歪とコンプライアンスの関係を調べたところ、両者は密接に関係しており、強度破壊点以前では非弾性歪が、強度破壊点以降ではコンプライアンスの変化が卓越していた。 次に、実験結果に基づいて、亀裂の進展を破壊力学によってモデル化を行い、構成則を提案し、一軸引張試験の数値計算を行った。実験結果と比較したところ、強度破壊点以前では、数多く存在している潜在亀裂による非弾性歪の増大が卓越しており、強度破壊点以降では最終的に破壊面となる、亀裂の挙動に支配されることがわかった。 最後に圧縮荷重と引張荷重を繰り返す両振り試験を行い、圧縮荷重での非弾性歪の変化が卓越していることがわかった。
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