ダイズのカルコン合成酵素遺伝子(chs)は遺伝子ファミリーを形成し、少なくとも7つのchs遺伝子(chs1-chs7)から成っているが、近年その構成パターンの差異が種皮着色の有無に密接な関連のあることが示唆されている。この事実に基づき、本研究では無着色種皮である黄豆ダイズおよびその種皮着色突然変異体、さらに着色ダイズならびにダイズの祖先種で通常着色種皮を有するツルマメについてchs遺伝子ファミリーの構成パターンを比較し、栽培化の過程でどのようにして種皮着色形質が失われていったかを調査するのが目的である。本年度の研究実績の概要はは以下の通りである。 1.ダイズ黄豆品種であるミヤギシロメとその集団中から自然発見された種皮着色突然変異体についてchs遺伝子ファミリーの構成パターンをサザンハイブリダイゼーションによって比較調査した。その結果、13.0kb Hindlll断片上に座乗しているchs1が種皮着色突然変異体では欠失変異を起こしていることが判明した。 2.着色種皮を有するダイズおよびツルマメ系統について、chs遺伝子ファミリーの構成パターンを比較した。その結果、黄豆品種と比較して多くの着色ダイズおよびツルマメ系統では様々なパターンの差異が見出されたが、一方で黄豆品種と同一パターンを示す着色ダイズおよびツルマメ系統も検出され、こられの系統については塩基配列レベルでの詳細な比較解析が必要であることが示唆された。
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