ダイズのカルコン合成酵素遺伝子(chs)は遺伝子ファミリーを形成し、少なくとも7つのchs遺伝子(chs1-chs7)から成っているが、近年その構成パターンの差異が種皮着色の有無に密接な関連のあることが示峻されている。この事実に基づき、本研究では、無着色種皮を有する黄豆ダイズおよびその種皮着色突然変異体、さらに着色ダイズならびにダイズの祖先種で通常着色種皮を有するツルマメについてchs遺伝子ファミリーの構成パターンを比較し、貴豆ダイズは栽培化の過程でどのようにして種皮着色形質を失っていったかを調査するのが目的である。本年度の石井究実績の概要は以下の通りである。 1. 種皮着色抑制遺伝子(I遺伝子)を有する黄豆品種および系統に特異的に存在し、その種皮着色突然変異体では欠失変異を起こすchs1遺伝子(I-chs1)領域のクローニングを品種ミヤギシロメにおいて行った。 2. ミヤギシロメと同様、I遺伝子を有する貴豆ダイズ4系統(刈系557号、刈系584号、刈系629号および吉林15号)においても、その種皮着色突然変異体では、いずれもI-chs1領域に欠失変異が起きており、種皮着色突然変異との関連性が強く示唆された。しかしながら、欠失パターンは各系統によって異なることがサザンハイブリダイゼーションにより明らかになった。 3. 刈系557号種皮着色突然変異体において、欠失変異を起こしたI-chs1領域(d-chs1)のクローニングをPCR法により行った。構造解析の結果、変異体ではI-chs1のエクソン1およびイントロンが完全に欠失していることが明らかになった。
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