研究概要 |
イネミトコンドリアゲノムにコードされるrrn26,trnfM遺伝子の転写量をrun-on転写法によって解析した。rrn26遺伝子とtrnfM,遺伝子は、同一の環状DNA分子内に存在し、両遺伝子のコード領域のそれぞれ、およそ200bp上流地点から76bpに渡って塩基配列の重複が確認されており、両遺伝子においてこの重複配列がプロモーターとしての機能を持っていることを明らかにした。trnfM遺伝子と一般に転写活性が高いことが知られているrrn26遺伝子が同じプロモーター配列を持っていることから、両遺伝子間のプロモーター活性の比較を試みた。まず、RNAの蓄積量を調べるためにノーザンハイブリダイゼーションを行った結果、rrn26遺伝子,trnfM遺伝子間でRNA蓄積量に大きな差異があることを確認した。更に、RNAの転写後調節による影響を除外するために、イネミトコンドリアにおいてrun-on転写法を構築し、この系を用いてそれぞれの遺伝子の転写活性を求めた。また、イネミトコンドリアDNAはマルチパ-タイト構造をとっており、各遺伝子間でコピー数の差があることも考えられるため、予備実験としてサザンハイブリダイゼーションを行い、コピー数の差並びにプローブ強度の補正値として用いた。この結果、同じプロモーター配列を持つにも関わらず、両遺伝子間で転写量に約4倍の差異があることを確認した。この結果から、イネミトコンドリアにおいて転写調節に関与する何らかのトランス因子が存在するのではないかと考え、rrn26遺伝子,trnfM遺伝子のそれぞれのプロモーター領域並びにプロモータ配列下流領域をプローブとして用い、ゲルシフト解析を行った。この結果、微弱ではあるがtrnfMプロモーター配列下流領域に特異的に結合する因子の存在を示唆するシグナルを検出した。
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