タバコ受精卵細胞に重粒子線照射を施し得られたM_1種子をNaClを含む培地で発芽させ耐塩性植物の選抜を行い、その生理特性の解析を試みた。BY-4品種の受精24-96時間の種子胚に10-200グレイの窒素(^<14>N:135MeV/u)ビームを照射し、1ヵ月後に得られたM_1種子を2%NaCl添加培地に播種し生存固体を耐性植物として育成した。また耐性植物よりカルスを誘導しその耐性能を検討した。その結果、3447粒より得られた17個の生存固体うち1系統のカルスに1.2%NaCl添加液体培地において耐性が認められ、塩ストレスにより野生株と比較し約3倍量のプロリン蓄積が確認された。M_2世代で耐性試験を行ったところ、3系統に耐性固体が認められた。また耐性の認められなかったM_2世代の1系統で、緑色固体とアルビノ固体が13:3の割合で分離しするものが観察された。この親株と野生株間で正逆交配を行ったところ、次世代は全て緑色固体であった。従ってメンデル則によりこのアルビノ形質は核支配の2遺伝子により制御され一方の遺伝子が抑制型に働いているものと推定される。一方、グルタミン酸からプロリンを合成する1-ピロリン-5-カルボン酸レダクターゼ(P5CR)および1-ピロリン-5カルボン酸シンテターゼ(P5CR)遺伝子また分解酵素であるプロリン脱水素酵素遺伝子(ERD5)の発現を調査することによりプロリン蓄積による耐塩性機構を分子レベルで明らかにできる。そこでシロイヌナズナのP5CRおよびERD5遺伝子についてそのホモロジーを調査した。その結果、P5CR遺伝子はホモロジーが高くタバコにも反応したが、ERD5遺伝子はホモロジーが認められなかったため、現在保存領域の配列よりプローブを作成している。
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