タバコ受精卵細胞に重粒子線照射を施し得られたM_1種子をNaClを含む培地で発芽させ耐塩性植物の選抜を行い、その生理特性の解析を試みた。BY-4品種の受精24-96時間の種子胚に10-200グレイの窒素(^<14>N:135MeV/u)ビームを照射し、1ヵ月後に得られたM_1種子を2%NaCl添加培地に播種し生存個体を耐性植物として育成した。また耐性植物よりカルスを誘導しその耐性能を検定した。その結果、3447粒より得られた17個の生存個体うち受粉24-36時間後の胚細胞に100グレイ照射を施したl系統のカルスに1.2%NaCl添加液体培地において耐性が認められ、塩ストレスにより野生株と比較し約3倍量のプロリン蓄積が確認された。M_2世代で耐性試験を行ったところ、前述の1系統および60-72時間後の胚細胞に10グレイ照射した試験区より2系統の計3系統に耐性個体が認められた。この3系統のM_2およびM_3種子について0.9、1.2、1.5、2.0%のNaCl溶液で発芽試験を行ったところ、いずれの系統においてもM_2世代よりもM_3世代で耐性の集積が観察された。その結果、60-72時間後の胚細胞に10グレイ照射した試験区の1系統においてM_3世代の発芽率は1.5%NaCl溶液で正常株が0.6%であるのに対して80.8%に、また2%溶液で正常株が全く発芽しないのに対して3.9%に上昇した。この時の幼植物のプロリン含量を測定したところ、正常株と耐塩性株との間に差異は認められなかった。またこれらの後代は種子稔性の顕著な低下が観察された。
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