今年度においては葉内亜鉛濃度の減少によるイネ葉内のカーボニックアンヒドラーゼ活性の低下が酵素含量の低下によっているのか、あるいは活性化率の低下によっているのかを探るとともに、mRNAの発現量と酵素含量との関係を調べることにより、カーボニックアンヒドラーゼのターンオーバーがどの程度でどのような機構によって活性の低下がおきているかを検討することを目的とした。その結果、 1.イネ由来カーボニックアンヒドラーゼcDNAを導入したプラスミドにより大腸菌を形質転換し、カーボニツクアンヒドラーゼを発現させ、これよりポリクローナル抗体を作成した。 2.葉内の亜鉛濃度の減少につれてカーボニックアンヒドラーゼ活性は低下するが、その影響は、気孔拡散抵抗や炭酸固定酵素サイトの炭酸固定抵抗には現れなかった。また光合成もあまり変化しなかった。 3.イネ葉内の亜鉛濃度の減少につれてカーボニックアンヒドラーゼのmRNAの発現は低下していた。 またその低下程度は活性とほぼ同じで、発現の段階での制御を受けていると考えられた。 4.カーボニックアンヒドラーゼ活性とリブロースビスホスフェートカルボキシラーゼ活性との協調性は亜鉛欠乏イネにおいては見られず、カーボニックアンヒドラーゼ活性だけが低下していた。 5.カーボニックアンヒドラーゼ含量とmRNAの発現量との間の関係はある程度見られ、カーボニックアンヒドラーゼ活性の低下が酵素含量の低下によっていると考えられた。
|