夏作物の栽培に利用するため圃場に投入したArbuscular菌根菌を栽培終了後も維持し翌年以降も利用するためには、冬場にどのような圃場管理を行えばよいのか検討した。本年度は、冬作物や冬期の雑草が秋から春の間の土壌中のArbuscular菌根菌胞子数にどのような影響を及ぼすか調査するとともに土壌水分や地温の違いが胞子の生存に及ぼす影響を明らかにした。 秋から春にかけて土壌中のArbuscular菌根菌胞子は減少するが、裸地よりオオムギやエンドウなどの冬作物の導入によって減少率は抑制された。さらにオオムギやエンドウには菌根が形成され、これらも翌年の作物栽培においてArbuscular菌根菌の接種源として利用できると思われた。 冬期に雑草を導入してもArbuscular菌根菌の胞子数は減少したが、裸地に比べ、ハコベやオランダミミナグサを導入したほうが減少率は抑制された。冬期の雑草のArbuscular菌根菌感染率は、ハコベやオランダミミナグサよりホトケノザのほうが高かった。ただし、全根長はハコベやオランダミミナグサのほうが長かったため、菌根長は雑草間に差がなかった。 土壌水分の違いは、胞子の生存の差に影響を及ぼさなかった。一方、土壌水分を一定に保ち、5、15、25℃で胞子を貯蔵した場合、貯蔵温度が低くなるほど生存胞子数は多かった。 以上のことから、冬期の作物や雑草のを導入は、Arbuscular菌根菌接種源を維持し一度投入したArbuscular菌根菌を長期にわたって利用することを可能にすると思われた。
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