研究概要 |
セイヨウナシ果実における収穫後の低温処理の生理学的意義を解明するために、低温に対する感受性の高い′ル・レクチェ′果実を用いて,低温処理がエチレン生合成におよぼす影響を検討した。 1.低温処理が低温処理中のエチレン生合成におよぼす影響;低温処理により,エチレン生成が促進され,5℃区では10日後から,1℃区では15日後からエチレン生成量の増加がみられた。また,エチレン生成量は60日間を通して,5℃区で最も多かった。無処理区では実験期間を通して,ACC含量の蓄積が少なかったのに対して,低温処理区では15〜20日後にかなりの量のACCが蓄積し,その後減少する傾向が認められた。ACC synthaseは,低温処理により活性が促進され,1℃区と5℃区ともに,20日後にピークに達した。ACC oxidaxe活性は,無処理区において,28日後に急激に増大し,ピークに達したのに対して,低温処理区では,徐々に増大し,60日後の活性が最も高かった。また,1℃区と5℃区を比較すると,5ど区の方で活性が高かった。 2.低温処理が20℃に移してからのエチレン生合成におよぼす影響;15日間の低温処理後に果実を20℃に移すと,1℃区では16日後に,5℃区では12日後にエチレン生成のピークが認められた。ACC含量は,1℃区と5℃区ともに,6日後まで急激に減少し,その後は低レベルで推移した。ACC synthase活性は,1℃区では,6日後まで急激に低下したのち,再び増大したのに対して,5℃区では1日後に急激に低下し,その後は同じレベルで推移した。ACC oxidase活性は,1℃区と5℃区ともに,6日後まで急激に増大した。 以上の結果より,セイヨウナシ′ル・レクチュ′果実に低温処理を施すと,ACC synthase活性がすみやかに増大し,その結果,ACCが蓄積すること,その後,ACC oxidase活性が増大することにより,ACCの減少とエチレン生成量の増加が生じることが判明した。さらに,低温から20℃に移すと,ACC synthase活性が急激に低下し,ACC oxidase活性は逆に顕著に増大した。
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