研究概要 |
筆者は,光質と植物の生育との関連について研究を行ってきた。本年度は,発光ダイオードによって各植物の特定の部位だけに異なる光質の光を照射し,その影響を検討した。供試植物はゼラニウムとした。生育維持にメタルハライドランプを,また,植物閣部位への部分光照射には,赤色,遠赤色,青色の3種類のLEDを光源として使用した。光強度は100μnol・m2・s-1とし、部分光照射を行った処理区では光強度の40%をLEDからの光照射とした。実験は環境制御室内で行い,明暗各12時間,気温25℃の環境条件とした。 花柄頂部に各種の部分光照射を行ったところ,花柄の長さに特別な変化は現れなかった。一方,花柄上部に部分光照射行った場合,赤色光ならびに青色光の部分照射では花柄の伸長が10%程度抑制され,反対に遠赤色光の部分照射によって花柄の伸長は14%促進された。これらの変化が観察された花柄の皮層ならびに髄の組織観察を行ったところ,赤色光と青色光の部分照射を行った処理区では雑管束に平行な方向の長さ800μn当たりの細胞数が対照区よりも多く,細胞伸長が抑制されていることが判明した。一方,遠赤色光の場合は,反対に細胞の伸長が促進されており,発光ダイオードの部分光照射による細胞伸長の変化が花柄長変化に関連しているものと思われる。同様の部分光照射処理を茎の生長点付近に行ったところ,茎長に関して花柄の場合と同様の変化が観察され,赤色ならびに青色光によって伸長抑制,遠赤色光によって伸長が促進された。一連の実験結果から,ゼラニウムの場合,花柄の伸長については花柄上部が,また,茎の伸長については生長点が光質の変化に関する受容組織である可能性が示唆せれた。
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