筆者は、光質と植物の生育との関連について研究を行ってきた。前年度は、発光ダイオードによって、ゼラニウムの花柄に異なる光質の光を照射しその影響を検討した結果、花柄そのものが形態形成の受光部位であることが明らかになった。本年度については、ゼラニウム以外の植物について、光質が伸長成長に及ぼす影響を評価した。供試植物はペシュニアとした。光源は、メタルハライドランプと高圧ナトリウムランプとし、各ランプの下での形態形成反応を観察した。 ペニチュアを高圧ナトリウムランプ下において栽培したところ、その伸長成長は抑制され、メタルハライドランプの場合よりも30%程度低い草丈となった。高圧ナトリウムランプ下の植物体について調査したところ、前年度報告したゼラニウムの場合と同様に細胞伸長が抑制されていることが判明した。この結果から、高圧ナトリウムランプ下では、節間の細胞伸長が抑制されそのことが節間伸長を抑制し、低い草丈となる要因であることが明らかとなった。光強度を変化させて実験を行ったところ、100μmol・m^<-2>・s^<-1>程度の弱光条件下では、強光条件と比べて、メタルハライドランプの場合は徒長したのに大して、高圧ナトリウムランプ下では光強度を変化させても草丈は低いまま維持され徒長が抑制された。高圧ナトリウムランプ下での草丈抑制効果は、高圧ナトリウムランプ下においた時点から観察され、生育期間中に光質をメタルハライドランプに変更するとその効果は失われた。各ランプ下でのジベレリン活性を調査したところ、処理区間に差異は観察されなかったことから、高圧ナトリウムランプ下での草丈抑制は、ジベレリンに対する感受性が低下したかあるいは、他の植物ホルモンが関与している可能性が示唆された。
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