研究概要 |
本研究では,カトレア類切り花に対してBA処理および外生エチレン処理を行い,日持ち,エチレン生成量,ACC含量,ACC合成酵素(ACS)およびACC酸化酵素(ACO)活性を測定し,カトレア切り花の老化,エチレン生成およびエチレン感受性について検討した。また,カトレア花弁の全RNAを抽出し,RT-PCR法を用いてACSおよびACO遺伝子の増幅を試みた。 Lc.(Dinah×South Esk)'M-8'およびLc.Irene Finny 'York'切り花へのBA処理は 'M-8'では3.8日から5.4日へと約1.6日間,'York'では7.5日から8.0日へと約0.5日間,それぞれ日持ちを延長する傾向があった。エチレン処理花に対するBA処理の延命効果は認められなかった。'M-8'および'York'切り花のエチレン生成のクライマクテリック上昇が収穫6日後に認められた。'M-8'および'York'切り花への外生エチレン処理により,エチレンのクライマクテリック上昇が収穫3日後に早まり,無処理区の約1/2の日持ちとなった。カトレアはクライマクテリック型の老化を示すことが示された。 'York'切り花の花弁において,ACS活性は収穫日から3日後にかけて急激に低下した。それに伴い生成されるACCも減少する傾向があった。しかし,ACC含量およびACS活性とエチレン生成量との相関は認められなかった。'York'切り花において,小花当たりのエチレン生成量の平均値と花弁あたりのACC酸化酵素活性の平均値との間に正の相関があった。以上のことから,エチレン生成を制制し,日持ちを改善するためには,ACSだけでなく,ACOを制御することが必要であると推察された。両酵素遺伝子をRT-PCR法で釣り上げたところ,アガローズ電気泳動で予測されるサイズのスメア(不明瞭)なバンドが認められた。より純度の高い遺伝子を得るために10年度はプライマーの種類を変えるなどPCR法の条件を検討する必要がある。
|