調査対象地として、神奈川県横浜市西部を流れる和泉川、同市北部の梅田川、同市南部の鼬川を選定した。河川横断方向に調査線(ライントランセクト)を設定し、これに沿って地形、土壌と現存植生を同時に調査することで、微地形や土壌の違い、流水による攪乱頻度の違いなどを考慮しながら植生の現状について分析、評価することができる。この方法による調査を和泉川の5地点および梅田川の1地点で実施した。その結果、生物の生息に配慮して施工された区間においてはそうでない区間と比べて種多様性の増加が見られたが、一部では帰化植物や路傍雑草群落構成種の比率がかなり高く、水辺の植生の復元という形には必ずしもなっていない。 鳥類については、施工区間における生物相が改善されたことを示す結果は得られなかった。今回調査の対象とした河川はいずれも小規模なため、隣接する空間の状況が、河川の鳥類に大きな影響を与えているものと判断された。 水性生物については、水質の汚濁による影響が生息空間の質的な改善の効果を減殺していることを示唆する結果が得られた。また、生息空間の質的な改善の効果が現れるには、施工後3年以上を要するものと判断された。さらに、河川の水文学的な特性を無視して生息空間の形成をはかった場合、維持管理のための強度の人為的攪乱や、土砂の堆積など水文学的な特性に由来する自然のプロセスによって、生息空間が本来の機能を発揮しないことも明らかになった。
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