横浜市内を流れる和泉川において生物調査を行い、いわゆる多自然型の河川改修が、生物相の改善に寄与しているか否かを分析した。 底生無脊椎動物については水質が及ぼす影響が顕著に現れ、ある程度水質が悪化してしまうと河川改修を工夫しても生物相の改善はほとんど望めないことが示された。ただ、現存量への効果についてはなお検討の余地が残る。サギ類の採餌行動を調査したところ、河岸の木杭の隙間など細かな凹入部を狙うことが多く、こうした場所が魚類や無脊椎動物の生息場所になっている可能性がある。水質の悪化が見られない上流部においては流路の状況に応じた底生無脊椎動物相が記録された。砂や泥が水底で優占する場合には、流れが遅くリターが厚く堆積している場所が底生無脊椎動物の主要なマイクロハビタットとなっており、加えて水際に生育する植物の根や株が、甲殻類を中心とした種類の生息場所となっていた。 付着藻類についても、水質汚濁により生息できる種が制約されていた。上流部においては、水際の植生や堆積物の性状が種組成に影響を及ぼしており、水際の植生の存在が藻類の種多様性の増加に寄与している可能性が示唆された。 植生については、河川改修により自然な河川に特徴的な種が回復したケースは和泉川においては見られず、人が立ち入る場所では導入されたシバが、立ち入らない場所ではセイタカアワダチソウやオオブタクサなど大型の帰化草本が優占する群落が主に形成されていた。水際部分の傾斜を緩やかにして土壌水分の多い領域の面積を広げることで、より湿生の植物群落に誘導するなど、目標群落に応じた植生管理をより意識的に行う必要があるものと考えられた。 鳥類については、河川改修部では他より高い頻度でサギ類の出現が見られた。その他の鳥類については、河川および河岸の状況だけでなく、周囲の植生や土地利用にも出現の状況が規定されていると考えられた。
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