平成9年度は、ブロッコリーやパッションフルーツ等の収穫後の老化・追熟とエチレンの関与に着目し、エチレンの合成に関わる酸素や、検知に関わる受容体の遺伝子を単離し、老化・追熟過程での各々の遺伝子の発現パターンを調べた。パッションフルーツはクライマクテリック果実であり、収穫後の追熟過程でのエチレン生成の上昇はACC合成酵素(PE-ACS1)とACC酸化酵素(PE-ACO1)のmRNAの蓄積レベルの上昇を伴うものであった。また、2種類のエチレン受容体遺伝子(PE-ERIとPE-ER2)の全鎖長cDNAを単離して塩基配列の決定を行った結果、PE-ERIはアラビドプシスのETRと同様にC末端にレスポンスレギュレーターを持つのに対し、PE-ER2はERSと同様にレスポンスレギュレーターを持たないことが明らかになった。これらの遺伝子は、組織により発現レベルが異なり、種衣(果肉)に比べて種子では発現量が低かった。PE-ACS1とPE-ACO1遺伝子は、果実にエチレンを与えることでも発現レベルが上昇することから、追熟過程で生成するエチレンによるポジティブフィードバック制御を受けていると考えられるが、追熟過程でのこれらの発現レベルは種子よりも種衣の方が高く、エチレン処理によるこれらの発現レベルの上昇も種子より種衣の方が顕著であったことから、種衣と種子の間のエチレンに対する感受性の差は、PE-ER1とPE-ER2の発現量の差によるのかもしれない。更に、平成9年度はブロッコリー花蕾の老化過程で発現が誘導される遺伝子の探索も行い、これまでエチレン受容体やシステイン・プロテアーゼと相同性を示す遺伝子の発現レベルが老化過程で高まることを見いだした。
|