(1) 4倍体台木の根の生育特性、養水分供給能力の比較 平成9年度に組織培養により育成し鉢上げを行った台木2品種Riparia Gloire de Monpellier及びRiparia×Rupestris3309の4倍体を親植物である2倍体との間で、根系の発達と穂木の生育と関係を調査した。鉢上げ後1か月の馴化期間中の生育比較では、新梢生育は2倍体と4倍体で差はほとんどないが、4倍体は根長が短くなった。ガラス温室に搬出後の生育は、4倍体で新梢生育が小さく、光合成速度、蒸散速度等も小さくなった。一方、根系は4倍体の個々の根長は2倍体の1/2程度であるが、根径はむしろ太く、根系全体の体積において4倍体と2倍体の差異は小さくなっていた。また、無機栄養分析の結果、茎葉部に大きな差異は見られないが、4倍体の根部で窒素、カルシウム等の濃度が高くなること認められた。 (2) マイクログラフティング 組織培養下で大量増殖した(1)と同じ2台木品種の2倍体と4倍体においてマイクログラフティングをおこなった。マイクログラフティングは、腋芽を持たない節間のみとした台木に、1芽を着けた穂木(品種‘巨峰')を割接ぎし、発根培地に挿すことで行った。無菌培養下での接ぎ木活着期間、鉢上げ馴化期間ともに穂木生長は2倍体台木と4倍体台木の間で差異が認められなかったが、根系は(1)と同様4倍体での伸長が大きく劣っていた。このことから、より生育が進んだ段階では、2倍体と4倍体台木では根域の差による地上部生長の差異が現れる可能性があるが、それを試験管内で早期に判定することは困難と思われた。また、高塩類、高浸透圧、低窒素条件等におけるそれぞれの台木の根の生育比較を行ったが、4倍体化による耐性の変化は特に観察されなっかった。 以上の結果から、4倍体化した台本は根域が狭くなり、養水分の供給能力にも差異が生ずることより、2倍体とは異なる穂木生育をもたらす可能性があるが、その樹勢調節能力については早期判定が困難であったため、今後も調査を継続し、台木としての能力の判定を行っていく。
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