研究概要 |
組織培養により得られた培養小植物の光独立栄養生長性(光合成能力)を改善し,鉢上げ後の順化の効率を高めることを目的として,カリフラワー(Brassica oleracea L.)の無菌発芽実生の茎頂より育成した培養小植物をモデル系として用い,その栄養生長生理特性を及ぼす培養環境の影響を調査した. まず着目した培養環境要因として,培地ショ糖濃度を変えた(0,1.5,3%).培養ビンの栓にテフロン製無菌通気膜を貼付した通気条件で培養した小植物は,単位面積当たりの光合成速度には有意差はなかったが,クロロフィル含量は糖添加により増加したことより,クロロフィル当たりの光合成速度は糖を添加しない培地のものが最も高くなった.培地ショ糖は光合成の発達には抑制的であると推察され,ショ糖がクロロフィル合成を介して光合成機能の発達に影響を及ぼしたことが示された. 次に培養内容器内のCO_2濃度に着目すると,小植物を含む密閉培養容器内のCO_2濃度は,明期開始より2時間後にはCO_2補償点近くまで低下し,著しいCO_2飢餓状態であると考えられ,光合成はほとんど行われていないと推察された.対して、自然大気通気条件(350μl/l)および高CO_2通気条件(1200μl/l)で培養容器内へのCO_2の供給を試みると,CO_2富化条件で培養した小植物が最も生育が旺盛で,自然大気通気条件で培養した小植物,密閉条件で培養した小植物の順に生育は低下した.これは,CO_2富化および通気条件下での培養により光合成に関連した葉内成分(クロロフィルおよび全可溶性タンパク質)の含量が増加したことに起因して,光合成能力が促進したことによると考えられた. このように,培地のショ糖濃度を低下させて通気条件下で培養することにより小植物の光合成能力を発達させ,それにより鉢上げ後の速やかな光独立栄養生長を促し,健全な小植物の順化が効率的に行えることが示唆された.
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