近年、西南暖地においても甘果オウトウの栽培が試みられているが、双子果の多発が大きな障害となっている。双子果は、多雌ずい現象の結果生じる果実であるが、発生の原因は知られていない。そこで、本研究では、多雌ずい花発生のメカニズムを解明するために、温度および土壌湿度の影響について、環境制御下での調査を行った。 まず、温度の影響について、甘果オウトウを花芽分化時に35℃、30℃、25℃の人工気象室で栽培し、多雌ずい花の割合を調査した結果、30℃以上の高温により多雌ずい花が発生することが明らかになった。また、高温により花芽分化の進行が遅れることも判明した。さらに、35℃の高温では、多雌ずい花に加えて雄ずいの雌ずい化も生じることから、花の雌性化が誘導されていると思われた。 一方、土壌湿度の影響について、甘果オウトウを花芽分化時に多湿(土壌pF<1.5)、湿潤(pF<2.1)、乾燥(pF<2.7)条件下で栽培し、多雌ずい花の割合を調査した結果、土壌湿度は多雌ずい花の発生に影響しないことが明らかになった。 これらのことから、甘果オウトウの多雌ずい花は花芽分化時の高温により発生することが明らかとなった。従って、西南暖地の甘果オウトウ栽培において、多雌ずい花の発生を抑制するためには、作型や栽培法の改善により、夏季に樹体の高温遭遇を避けることが重要であることが示された。
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