カメムシの卵寄生蜂、カメムシタマゴトビコバチの寄主探索機構を明らかにするため、まず、室内でオルファクトメーターおよび風洞実験装置を用いてどのような匂いを手がかりとして寄主を探しているのかを調べた。Y字管オルファックトメータで風速20cm/s以上の風速では静止し動かなかったため、20cm/s以下の風速で実験を行った。ホソヘリカメムシ雌成虫および雄成虫の匂いには誘引されなかった。また、雄成虫の集合フェロモンの合成剤にも誘引されなかった。野外では雄成虫の集合フェロモンに誘引されていることが確認されているため、照度やそれ以外の要因が蜂の歩行行動に影響した可能性がある。また、風洞実験装置内で、蜂が飛翔するかどうかを調べたが、どの風速条件下でも飛翔は観察されなかったため、現在幼植物を設置した風洞内での歩行による寄主探索行動を調査中である。野外調査では、大学構内、付属農場、およびその近郊のクズ群落および大豆畑でカメムシ成虫の集合フェロモンを用いた粘着トラップにより成虫の季節的消長を調べるとともに植物部位ごとの寄生率を調査した。野外トラップは1996年10月から現在に至るまで設置され、毎週捕獲頭数を記録した。カメムシタマゴトビコバチは1996年10月から11月上旬まで、1997 5月中旬から1997年11月中旬までの間捕獲された。11月中旬以降、5月までトラップに捕獲されないことから、本寄生蜂は11月以降ダイズ畑やクズ群落から分散すること、マルカメムシがクズ群落で繁殖を始める5月以降に寄生活動を始めること、がわかった。本寄生蜂は成虫越冬であると考えられているが、この間どこで越冬しているのかはわかっていない。また、捕獲された成虫のサイズを計測したところ、5月中旬から6月にかけてはホソヘリカメムシ卵やホシハラビロヘリカメムシ卵など大型寄主から羽化した成虫のみが活動しており、それ以降マルカメムシ卵から羽化した成虫がみられるようになった。この結果から、大型の蜂のみが越冬できること、5月にクズ上のマルカメムシ卵で増殖した蜂が6-7月にダイズ畑に移動して繁殖を行うこと、が明らかになった。
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