研究概要 |
Pseudomonas cichoriiによる難防除病害であるレタス腐敗病に耐性を示すレタスの作出を目的として、P.cichoriiに高い抗菌活性を示すカイコ幼虫由来のセクロピンBの誘導体であるセクロピンSHIVA-1遺伝子を合成した。P.cichoriiの感染部位である細胞間隙にセクロピンSHIVA-1が蓄積されるように、Lycopersicon esculentum由来のβ-1,3グルカナーゼのシグナルペプチド遺伝子を合成し、セクロピンSHIVA-1遺伝子と翻訳活性を増大させるタバコモザイクウイルスのΩ配列とともにバイナリーベクターpBI121に連結した。このバイナリーベクターをエレクトロポーレション法で導入したAgrobacterium tumafaciensをレタスに接種し、55の再生個体を得た。馴化後、PCR法にて51個体でセクロピンSHIVA-1遺伝子とΩ配列の導入を確認した。セクロピンSHIVA-1遺伝子の導入が確認された個体から採種された22系統187個体をガラス室内にて育成し、レタス腐敗病に対する抵抗性を切葉接種試験により調べた。10系統17個体において腐敗病の病徴の軽減が認められ、腐敗病にたいする抵抗性が付与されていることが明らかとなった。これらの個体から採種を行い、得られたT2個体より、粗抽出タンパク質画分と細胞間隙画分を調製し、合成した全長のセクロピンSHVA-1をウサギに免疫することで作製した抗体を用いてウエスタン解析を行ったが、セクロピンSHIVA-1に相当するバンドを検出することは出来なかった。また、T2個体の全RNAを調整し、セクロピンSHIVA-1遺伝子に特異的なプローブを用いてノーザン解析を行ったが、セクロピンSHIVA-1mRNAは検出することができなかった。本研究において、腐敗病に耐病性を示すレタスを作出することはできたが、その詳細な機構については今後の検討を要すると考える。
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