本年度はカイコならびにクワコのW染色体を含むゲノムライブラリーを、それぞれラムダファージを用いて作製した。続いてそれぞれのライブラリー中より、W染色体に特異的なランダム増幅多型DNA(RAPD)を含むファージを1つずつクローニングした。さらにそれぞれのファージ中の挿入断片のDNA塩基配列を決定した。 その結果、カイコのW染色体断片は約18Kbp、クワコのW染色体断片は約16Kbpであった。カイコのW染色体断片18Kbpは、全域にわたりレトロトランスポゾン様配列が並んでいた。詳しい解析の結果gypsy-Ty3 グループに属するLTR(long terminal repeat)型の新規のレトロトランスポゾンの中に、Tyl-copia グループに属する新規のLTR型レトロトランスポゾンと、non-LTR 型のレトロトランスポゾンであるBMC1、さらにはレトロポゾンである Bm1、機能不明のレトロトランスポゾン様配列が、それぞれ挿入されていた。一方、クワコのW染色体断片16Kbpも、全域にわたりレトロトランスポゾン様配列が並んでいた。詳しい解析の結果、Pao グループに属する新規のレトロトランスポゾンの中に、4個のレトロトランスポゾンと、3個のレトロトランスポゾン様配列が挿入されていた。挿入様式は、Paoグループに属する新規のレトロトランスポゾンの中に、別のレトロトランスポゾンが挿入されていて、さらにそのレトロトランスポゾンの中にも、また別のレトロトランスポゾンが挿入されているといった、いわゆる「入れ子」状態であった。以上の結果から、カイコとクワコのW染色体にはレトロトランスポゾンが密集していることが示唆された。
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