現在我が国で最も被害の大きいトマト青枯病の病原菌(Ralstonia solanacearum YU1Rif)およびその拮抗細菌として蛍光性シュードモナス(Pseudomonas fluorescens MelRC2Rif)を取り上げ、これらモデル細菌の根圏への定着に関与する微生物群集を解明することを目的とし、lux遺伝子を組み込んだ両細菌のトマト根面への定着に及ぼす個々の微生物種の影響について検討した。トマト種子を20種余の分類的位置の異なる様々な土壌細菌を含む軟寒天中で栽培し、各種細菌を先住させた後、MelRC2RifあるいはYU1Rifを接種し、トマト根への定着程度を比較した。MelRC2Rifのトマト根への定着は、同種以外の細菌によってはほとんど抑制されず、MelRC2Rifは根面上で多くの根面細菌と住み分けていることが推察された。また同種の中にも影響の強い菌とない菌とが存在し、同種内に生態的地位の異なるグループが存在することが想像された。これらの推察は根面への定着抑制効果がない菌でも、トマト根分泌物中では抑制効果を有していたことからも支持された。YU1Rifのトマト根への定着もMelRC2Rifの場合と同様に同種の菌によって最も強く抑制され、種が異なる細菌種の定着抑制能は多くの場合小さいものであった。しかし、本病原菌に対する拮抗菌として分離されたMelRC2RifはYU1Rifの定着を最も強く抑制し、本拮抗菌によるトマト青枯病防除のメカニズムは病原菌の根面への定着抑制であることが示唆された。また、CCDカメラを用いることにより、これら細菌のトマト根面への定着の様子を簡便に観察することが可能であった。昨年度の結果も踏まえると、MelRC2Rif.YU1Rifのトマト根面への定着に最も影響するのは同種の菌であり、種が異なると多くの場合住み分けが起こることが明らかにされた。
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