ズブチリシン ALP Iは、界面活性剤に対する耐性は示すが、アルカリ条件下での安定性はあまりない。また、ズブチリシン ALP Iにはアルカリズブチリシンとのみ共通な配列をもつ領域と中性ズブチリシンとのみ共通なアミノ酸配列をもつ領域が存在する。そこで、耐アルカリ性に優れたアルカリズブチリシン Sendaiの構造の一部をズブチリシン ALP Iの中性ズブチリシンとのみ共通な対応する領域と入れ替えたキメラ・ズブチリシンを作製することにした。この様な領域は、ズブチリシン ALP Iの中に13ヶ所見いだされた。そのうちの一つ、C末端の7アミノ酸(-DAEYAAQ)をアルカリズブチリシン型(-NAEAATR)に置換したキメラズブチリシン ALP Iを作製した。作製されたキメラ酵素のカゼインや低分子合成基質に対する比活性は、野生型酵素とほとんど変わりがなかった。そこでこのキメラズブチリシンを用いて、アルカリに対する耐性を調べたところ、野生型の酵素の50%失活時間にくらべてキメラ酵素の50%失活時間は120倍に延長されていた。また、耐熱性も5〜10℃向上した。界面活性剤に対する耐性を調べると、野生型のズブチリシン ALP Iよりもはるかに安定であった。以上のことよりズブチリシンの各種の安定性には、カルボキシル末端付近のアミノ酸の配列が非常に重要であることが明らかになった。また、このキメラ酵素作製法は超安定化酵素造成の優れた方法であることを明らかにした。
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