研究概要 |
平成8年度奨励研究(A)の成果を踏まえて、本年度では更にpsbA2遺伝子の非翻訳領域(+1〜+52)に存在するAT-rich塩基配列(シスエレメント)に様々な変異を導入し、光誘導性発現に与える影響をin vitroならびにin vivoで詳細に解析した。その結果,AT-rich配列は光誘導性発現にとって重要な配列であることを再確認すると共に、暗黒培養条件下でこの配列に結合してpsbA2の転写(或いはmRNAの安定性)を減少させる因子が存在する可能性が強く示唆された。 そこで、光合成遺伝子psbA2の光誘導性(明培養条件下では発現量が増加し、暗黒培養条件下では減少する)発現調節機構の解析の為、この発現機構に「負」に作用すると予測されたレプレッサー様の転写調節蛋白質の同定を試みた。暗黒培養条件下で培養したラン藻M.aeruginosa K-81菌体より、psbA2のプロモーター領域とその上流・下流も含んだDNA断片に結合する分子量約39キロダルトンの蛋白質の部分精製に成功した。この蛋白質を含んだ部分精製蛋白質画分を、psbA2遺伝子の試験管内転写合成系に添加したところ、予想どうり、転写の合成阻害が確認された。現在、2次元電気泳動法による39キロダルトン蛋白質の完全精製を試みている。 以上、平成9年度で得られた研究成果の一部は雑誌論文として公表予定で、現在印刷中である。同時に、国際学会(第97回アメリカ微生物学会)や国内セミナー(平成9年度第20回筑波微生物セミナー)において、研究成果を発表した。平成10年度は引き続き、psbA2遺伝子の光誘導性発現を「負」調節する蛋白質の解析を行う予定である。
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