研究概要 |
エステル系PUR分解菌、Comamonas acidovorans TB-35株のPUR分解酵素について、以下の酵素学的および分子生物学的な検討を行なった。 まず、既に精製されているTB-35株由来のPURエステラーゼを用いて、その酵素学的諸性質について検討を行った。その結果、本酵素は基質であるPURに疎水的に付着する部位を有し、その付着がPUR分解に関与していることが示唆された。 次に、PUR分解酵素遺伝子をE.coliを宿主としてクローニングし、その全塩基配列を決定した。本遺伝子は1,644bpのORFからなり、550残基のアミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。 本酵素の一次配列は、真核生物(Torpedo califormica)由来のアセチルコリンエステラーゼ(TAChE)と約30%の相同性を示したが、二次構造モチーフの比較より両酵素の立体構造が非常に類似していることが推察された。TAChEはSer,Glu,Hisを活性中心とするエステラーゼであるが、活性中心付近の一次配列の比較より、PURエステラーゼの活性中心もSer-Glu-His型であり、他の原核生物エステラーゼ(Ser-Asp-His型)とは異なる新規のエステラーゼであると考えられた。既に決定されているTAChEの立体構造をモデルとして、PURエステラーゼの立体構造を予測したところ、酵素表面に基質付着部位と思われる3つの疎水領域が存在した。この疎水領域が、酵素分子をPUR表面に付着させる役割を担っていると考えられ、その分解機構モデルは酵素学的検討により推察したモデルと一致した。 さらに、大腸菌を宿主とした組み換え型PURエステラーゼの大量発現系を構築した。改変タンパクの効率的な精製方法として、ヒスチジンタグの付与を行い、これを用いてPURエステラーゼのタンパク質工学的改変を試みた。
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