研究概要 |
1.異種タンパク質であるB型肝炎ウイルスPreS2抗原のペリプラズム生産にともない、ペリプラズムプロテアーゼDegPの他3種のタンパク質の発現量が顕著に増大することを認めている。うち25kDa,32kDaタンパク質についてはそのN末端配列から、PhoA-PreS2、preBlaと同定した。これらはベクター由来のものである。ストレスの結果誘導されてくる因子を同定する目的で、シグマ因子や種々のペリプラズムシャベロン、プロテアーゼについてその発現量変化をノザン解析によって調べた。その結果、PreS2のペリプラズム生産にともない、rpoEやdegPの転写量の増大が認められた。一方dsbAやrpoHの転写量には変化が認められなかった。このことから、異種タンパク質PreS2の分泌生産はo^Eを活性化することが明らかになった。外膜タンパク質OmpXの高発現にりo^Eが活性化されrpoEとともにdegPが転写誘導され(o^E系)、一方外膜タンパク質NlpEの高発現によりresponse regulatorであるCpxRが活性化されdegPとともにdsbA、rotAなどのペリプラズムシャベロンの遺伝子が転写活性化される(cpx系)ことが極めて最近明らかになった。異種タンパク質の生産により前者のo^E系が活性化されdegPの誘導が引き起こされるとの報告はまだなく、今回の結果は2つの系の意義を考える上で興味深い知見である。 2.最近大腸菌リポタンパク質の内外膜への局在化シグナルの実体が明らかにされた。そこでこの知見を利用し、PhoA-PreS2の局在化シグナル部分に変異を導入し、PreS2を大腸菌内膜あるいは外膜へと局在化させるためのベクターの構築に成功した。現在、異種タンパク質を大腸菌内膜あるいは外膜へと局在化させた場合におけるストレス応答の違いの詳細をパルスチェイス実験によって解析している。
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