破骨細胞は未分化血液幹細胞がホルモンやサイトカインなどの液性因子と、骨芽細胞を始めとする間質細胞と物理的に接触することによって形成されると考えられている。マウス骨髄細胞と頭蓋骨から分離した骨芽細胞との共存培養系を用いて、微生物代謝産物から破骨細胞の分化の初期マーカーである、酒石酸耐性フォスファターゼ(TRAP)活性の発現を指標として破骨細胞の分化を調節する物質の探索を行った。その結果、破骨細胞の分化を誘導する物質として微生物由来のカルシウムATPase阻害剤cyc1opiazonic acid(CPA)とカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンに活性を見い出した。また誘導された細胞が酵素活性や骨吸収能などの破骨細胞に特有の形質を有していることを確認した。共存培養系から分離した破骨細胞の前駆細胞と骨芽細胞それぞれに、上記の化合物を前処理して破骨細胞形成能を調べた結果、骨芽細胞を前処理した時のみ破骨細胞の分化が誘導された。さらにこれらの化合物は骨芽細胞の細胞内カルシウムレベル上昇を誘導することを確認した。このカルシウムレベルの上昇作用を阻害するBAPTA-AMは破骨細胞の分化を抑制した。以上のことから細胞内のカルシウムレベル上昇は骨芽細胞に破骨細胞分化誘導活性を発現させる新しい分化シグナルであることを明かにした。
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