研究概要 |
トウモロコシの細胞質基質局在型グルタミン合成酵素(GS1)アイソザイムのうち、窒素源に対する応答性の異なる誘導型GS1(GS1c,GS1d)と構成型GS1(GS1a,GS1b)の、酵素化学的性質(比活性、熱安定性、Mg^<2+>,Mn^<2+>要求性)の違いを律する領域・アミノ酸残基の同定を試みた。GS1a,GS1dをタンデムに連結したプラスミドを構築し、recA^+大腸菌内での相同組替えにより、任意の場所で組換えを起こしたGS1a/GS1dのキメラ酵素を多数作製した。キメラ酵素の2価金属イオン依存的な安定性を調べ、安定性に変化を与える領域を絞り込んだ。次に、その領域内で、GS1aとGS1dの間で保存されていない7つのアミノ酸残基についてGS1a上のアミノ酸を順にGS1d型へ置換し、その影響を調べたところ、GS1aのlle_<161>からAla_<161>への置換体で安定性が大きく低下した。このことは、161番目の疎水性アミノ酸残基側鎖の性質が、GS1a,GS1d間での2価金属イオン依存的な安定性の違いに深く関与していることを示唆している(投稿準備中)。 植物GSの翻訳後レベルでの活性制御機構、特にフィードバック阻害について調べたところ、植物のGSはAlaとADP,AMP、またカルバミルリン酸(CP)とADP,AMP共存在下で累積的フィードバック阻害を受けること、興味深いことにAlaとCP存在下では相乗的フィードバック阻害を受けることが明らかとなった。このことは植物GSが、細胞内の窒素・エネルギーレベルによって活性レベルで強い制御を受けることを示唆している(論文作成中)。 窒素と炭素代謝のクロストーク機構研究の発端とすべく、糖合成の鍵酵素であるスクロースリン酸合成酵素が多重遺伝子族を構成することを見出し、発現様式の違いを明らかにした(報文1)。 窒素のサイトカイニンを介した情報伝達に関わると考えられる、二成分情報系因子のホモログの遺伝子を見出し、その発現様式を明らかにした(報文2)。
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