研究概要 |
微生物に見出した新規な環状イミド代謝系の有用性を探ること、および、環状イミド代謝系を用いた有用物質生産プロセスを構築することを目的とし、その酵素系の解析、さらには、微生物界における有用環状イミド変換反応の探索を行い、以下の結果を得た。 (1) 芳香族環状イミドや、バルキーな置換基を有する環状イミドを変換する活性を探索した結果、フタルイミド、シクロヘキシミドを代謝変換する微生物を多数見いだした。また、フタルイミド変換微生物の一種をArthrobacter ureafaciensと同定した。 (2) フタルイミド変換菌Arthrobacter ureafaciens o-86を用い、有用物質生産プロセスとして2,3-ピリジンジカルボキシイミドの部位選択的加水分解反応を検討した結果、基質分子内の等価な2つのアミド結合のうちの一方を特異的に加水分解し、有用な3-カルバミルピコリン酸を生産することを確認した。また、部位選択性を向上させる至適反応条件として、低pH(pH4.5〜5.5)、水-有機溶媒二相系(水-シクロヘキサノン)が効果的であることを見いだした。 (3) 環状イミド代謝系の最終産物であり有用性の高い有機酸であるピルビン酸を、安価な環状イミド代謝中間体であるフマル酸から環状イミド代謝系酵素を利用して生産するプロセスの構築を検討した結果、グルタルイミド資化性菌Pseudomonas sp.g31が至適反応条件下、100mMのフマル酸から94mMのピルビン酸を生成することを見いだした。また、効率生産には、通気撹拌が必要であることを見いだした。
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