研究概要 |
1. フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)の活性部位の解析 FADOは糖尿病の診断マーカーである糖化タンパクに作用し、糖尿病臨床診断に有用な酵素である。糸状菌Aspergillus terreus GP1株のFAODの活性部位と予想されている領域に存在する2つのシステイン残基(C334,C336)をそれぞれセリンに変換した変異酵素を作成した。それぞれの変異酵素を解析した結果、C334が活性発現に、C336は補酵素であるFADの結合に関与していることが予想された。実際のFADの共有結合サイトを同定したところ、両システイン残基ではなく、C277であることが分かった。C277S変異酵素についても検討してみると、活性は若干低下したものの、糖化ペプチドに対する特異性が高まり、臨床診断用酵素としてより適した酵素の作成に成功した。 2. 糸状菌サルコシンオキシダーゼ(SOX)のcDNAクローニング FAODは哺乳類、細菌などのSOXと部分的に相同性を示すことが分かっている。糸状菌で唯一SOXを有するCylindrocarpon didymum M-1株からSOXのcDNAをクローニングし、一次構造を明らかにした。活性中心と予想されているシステイン残基(A.terreus GPl株由来のFAODにおけるC334)は全てのFAOD、SOXに保存されていたが、C.didymum M-1株のSOXは他の生物由来のSOXよりもむしろFAODに高い相同性を示した。FAODに高く保存されている領域について、C.didymum M-1株のSOXの同じ領域の配列と置換したところ、FAODはサルコシンに対して活性を示すようになり、この領域が両酵素の基質特異性に関与する領域であることが予想された。
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