研究概要 |
出芽酵母において液胞へのタンパク質輸送に欠陥を示すvps(vacuolar protein sorting)変異株の解析から40種類以上もの遺伝子が、液胞タンパク質輸送に関与していることが明らかにされている。しかしながら分裂酵母においては液胞へのタンパク質輸送に関する機構は全く知られていない。そこで分裂酵母の液胞タンパク質マーカーとしてカルボキシペプチダーゼY(CPY)を単離して、本酵素の液胞への輸送機構について解析を行った。 その結果、分裂酵母CPYは出芽酵母など他起源の酵母CPYとは異なり、高等な植物などと同様にヘテロダイマーとして存在することを明らかにした。また液胞へのCPYの輸送には高等動物とは異なり糖鎖部分は関与しないが、その糖鎖はERで合成される場合のタンパク質のフォールディングに重要であることがわかった。さらにCPYやインベルターゼなどの分裂酵母における糖タンパク質の分泌に欠陥を示す変異株を取得した。これらの変異株を相補する遺伝子の中には、出芽酵母のERからゴルジ装置のタンパク質の輸送に必須なErd1タンパク質や、ゴルジ間のタンパク質輸送に関与する低分子量G-タンパク質のypt6などのホモログ遺伝子であることがわかった。さらにCPYへの液胞への輸送シグナルはタンパク質のプロペプチド部分に含まれていることがわかった。分裂酵母CPYが誤って細胞表層へとミスソートされてしまう変異株を多数取得することができた。これらの変異株の中には、既に出芽酵母において液胞へのタンパク質輸送に関与することが知られているVPS34,VPS4,VPS5,VPS11,VPS19,VPS45などが合まれていることがわかり、これらのタンパク質が生物種を越えて広く真核生物のタンパク質輸送に関与することを明らかにすることができた。
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