近年プラスチック廃棄物による環境汚染が問題ととなるに至り、自然環境下で分解するポリヒドロキシ酪酸(PHB)等の生分解性プラスチックの開発が進められている。生分解性プラスチックの開発において必要不可欠である分解性試験のための試薬として有用であるPHBデポリメラーゼの大量生産、本酵素産生微生物の自然界における分布の検討、産生微生物間における本酵素の酵素化学的な相違点の検討、及び本酵素の一次構造解析による分子進化論的な考察を目的として本酵素を産生する微生物を広く自然界よりスクリーニングした。 富山県下の土壌及び活性汚泥からスクリーニングした結果、PHB分解菌としてArthrobacter sp W6株を得た。本菌は胞子形成能が無く、グラム陽性の運動性を有する短桿菌であり、細胞壁の分析よりArthrobacter属に属する細菌と同定した。本菌は生育と共に培地中のPHBを分解した。培養上清中の酵素活性が最大となる条件で本菌を培養し、得られた培養上清よりPHBデポリメラーゼを均一に精製した。この精製した酵素の至適温度・pH、安定温度・pH、阻害剤、基質特異性、補酵素の要求性、及び速度論的解析等の各種酵素化学的諸性質を検討し、他の微生物由来のポリヒドロキシ酪酸加水分解酵素と比較した。今後は、本菌からゲノミックDNAを抽出し、適当な制限酵素で断片化した後、プラスミドに挿入してゲノミックDNAライブラリーを作製し、これから本酵素をコードする遺伝子を含むクローンを選抜する。得られたPHBデポリメラーゼ遺伝子を用いて大腸菌での大量発現系の構築を試みる予定である。
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