研究概要 |
活性酸素種によって引き起こされる酸素ストレスは、酸素を利用する生物にとくってリスクである。高等植物における様々な環境要因によるストレスは、光合成機能、特に光化学系の進行を妨げる。その結果、光条件下では活性酸素の生成が促進され、植物細胞への直接的な障害のきっかけになると考えられている。これらの環境ストレスに対する植物側の防御系の中心が、一連の活性酸素消去系酸素群である。本研究では、これまでに単離した活性酸素消去系酵素群の遺伝子が酸化ストレスに対してどの様な応答反応を示すかを調べ、高等植物ではまだ明らかになっていないレドックス制御の分子機構に関する知見を得ることを目的とした。 イネの芽生えを用いて、各種(活性酸素,乾燥,塩)ストレスを与え、活性酸素消去を初発反応を触媒するスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)遺伝子の各アイソザイムの発現応答mRNAレベルで検出した。活性酸素(O^<2->・)発生剤であるパラコート、或いは過酸化水素(H_2O_2)で24時間処理し、光照射下においたところ、2種の細胞質型Cu/Zn-SODとMn-SODは僅かな発現量の増加がみられたが、葉緑体型Cu/Zn-SODは処理後2時間で強く発現誘導を受けた。高濃度の塩処理により葉緑体型Cu/Zn-SODは、処理後徐々に発現量が増加したが、他のアイソザイムは変化しなかった。 また、アブシジン酸(ABA)処理により2種の細胞質型Cu/Zn-SODとMn-SODは発現量の増加がみられたが、葉緑体型のCu/Zn-SODの発現量は徐々に減少した。この傾向は、イネ芽生えを乾燥処理した場合と類似しており、乾燥ストレス時にはABAはSODの発現制御を担うシグナルとして働くのに対し、塩ストレス時には、ABAを介さないシグナル伝達経路が働くと予想された。
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