amfRはストレプトマイシンを生産することで知られる放線菌Streptomyces griseusno形態分化において重要な役割を果たすと予想して我々が単離・同定した制御遺伝子である。amfRはプラスミド上でS.griseusのA-ファクター欠損変異株に導入するとその気中菌糸から胞子の形成を誘導する性質をもつことから、特に気中菌糸の形成の開始を正に制御していることが示唆されていた。このamfRの役割をさらに詳細に検討することを目的として、本年度はamfR遺伝子破壊株の取得を中心に実験を行った。方法は、かつて我々がamfc遺伝子破壊株を取得した時と同様に、プラスミドpKM206を用いてカナマイシン(Km)耐性遺伝子を挿入したamfR遺伝子断片をS.griseus野性株に導入し、pKM206の脱落のしやすさを利用して2回組み替えの結果破壊片amfR遺伝子が染色体上の残った株をKm耐性をマーカーとすることで行った。その結果、4株のKm耐性株を取得し、その内の少なくとも1株は期待通りのamfR遺伝子破壊株であることがサザンハイブリダイゼーションの結果明らかになった。 上記のようにして取得したamfR破壊株は、YMP-グルコース培地上でほぼ完全に気中菌糸・胞子形成が欠損した形質を示すことが判明した。この株の胞子形成は、野生型amfR遺伝子をクローン化したプラスミドを導入することで野生株とまったく同レベルに回復したことから、ここで観察した胞子形成欠損の性質はamfR遺伝子を破壊したことに由来していることが確認された。また、amfR破壊株は野生株と同レベルのA-ファクラ-生産性、ならびにストレプトマイシン生産性を示したことから、当初の予想どおりamfRはS.griseusの形態分化に特異的に作用する制御遺伝子であることも明らかになった。
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