Streptomyces属細菌に由来するマクロライド系抗生物質群であるポリナクチンは、様々な生理活性を有し、醗酵生産により農薬として実用化されている。また、構造類似の抗生物質パママイシン-607もStreptomyces albonigerの気菌糸促進物質として単離されたが、これも幅広い抗菌スペクトルを示す。本年度は両抗生物質の構成単位の合成研究を行った。ポリナクチン中で最強の活性を有するテトラナクチンの構成酸である(+)-ホモノナクチン酸、およびパママイシン-607の南半球部の合成を行った。主として既に報告した(±)-ホモノナクチン酸の合成法に従い、より選択的に合成を行った。 シャープレスの不斉エポキシ化反応を用いて不斉を導入した化合物の側鎖を延長し、ラセミ合成時のヨードエーテル化の前駆体を合成した。この化合物の炭素鎖をさらに延長してエノンとし、これに対して完全にシスに制御されたヨードヨードエーテル化を行い、ケトテトラヒドロフラン体Aを得た。Aのケトンの還元では、非選択的の望むアルコールBと異性体Cが得られたので経路を変更した。即ち、炭素鎖を延長する際に予め不斉水酸基を有する化合物Dとの縮合を行った。Dは数工程でベンジルグリシジルエーテルより調整した。縮合物に対して同様にヨードエーテル化反応を行い、テトラヒドロフラン体を得た。更に3工程を経て目的物、(+)-ホモノナクチン酸を合成した。また、8-エピ体をCから合成した。同様にパママイシン-607の南半球部も数工程を残す中間体まで導いた。
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