研究概要 |
植物ホルモンの一つであるジベレリン(GA)はレタス種子の光発芽誘導に重要な役割を担っていると考えられている.すなわち,レタス種子においては赤色光による発芽誘導時に活性型GAであるGA_1の内生量が増加することが示されており,本研究ではどの生合成段階が赤色光処理により促進されるかを追求するために,まずGA生合成の後期段階を触媒する2つの可溶性酵素,GA 20-酸化酵素(GA_<53>→GA_<44>→GA_<19>→GA_<20>),GA 3β-水酸化酵素(GA_<20>→GA_1)のcDNAをレタス種子よりクローニングすることにした.他の植物でクローニングされている当該酵素の推定アミノ酸配列の間で相同性の高い部分を基にして設計したデジェネレートプライマーを用いて,レタス種子より調製したcDNAを鋳型としてPCRを行った.その結果,2つの酵素についてともに2種類ずつのPCR断片が得られた.その塩基配列より推定されるアミノ酸配列についてBLASTによるホモロジー検索を行ったところ,ともに他の植物の当該酵素と高い相同性を示したので,これらの断片がレタス種子のGA 20-酸化酵素,GA 3β-水酸化酵素遺伝子から増幅されたものだと考えられた.これらの断片の塩基配列を基にして全長のcDNAの塩基配列を5′RACE(Rapid Amplification of cDNA End),3′RACEにより決定した.その結果,383個,369個のアミノ酸をコードするレタスGA 20-酸化酵素遺伝子,Ls20ox1,Ls20ox2と,363個,362個のアミノ酸をコードするレタスGA 3β-水酸化酵素遺伝子,Ls3hl,Ls3h2がクローニングされた.それらのコード領域を発現ベクターpMAL-c2に組込み,マルトース結合タンパク質との融合タンパク質として活性検定を行った結果,Ls20oxはGA_<53>→GA_<44>→GA_<19>→GA_<20>,Ls3hはGA_<20>→GA_1の変換段階を触媒することが示され,全てのクローンが当該酵素をコードしていることが明らかになった.
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