研究概要 |
植物ホルモン・ジベレリン(GA)はレタス種子の光発芽誘導に重要な役割を担っていると考えられている.レタス種子においては赤色光による発芽誘導時に活性型GAであるGA_1の内生量が増加することが示されており,本研究ではどの生合成段階が赤色光処理により促進されるかを調べることを目的とする.昨年度は,GA生合成の後期段階を触媒する2種の可溶性酵素,GA 20-酸化酵素,3β-水酸化酵素をコードするcDNAをレタス種子より2種ずつクローニングした(Ls20ox1,Ls20ox2,Ls3h1,Ls3h2).本年度はまず,その他のアイソザイム遺伝子をクローニングするために,いくつかの種類の縮重プライマーや種子以外の起源のcDNAを鋳型として用いて探索を行った.その結果,各々の酵素について3種目のアイソザイムをコードするcDNAがクローニングでき,それぞれLs20ox3,Ls3h3と名付けた.また,GA生合成経路の中でも初期段階を触媒するコパリル二リン酸合成酵素とent-カウレン合成酵素をコードするcDNAもレタス種子より1種ずつクローニングし,それぞれLsCPS1,LsKS1と名付けた.ゲノミックサザン分析により上記8種の遺伝子は1コピーであると判断され,これら8種のcDNAをプローブとして,発芽光条件と非発芽光条件で培養したレタス種子を用いてノーザン分析を行った.その結果,初期段階を触媒するLsCPS1とLsKS1の遺伝子発現は光処理の影響を受けず,後期段階を触媒する酸化酵素の中でもLs20ox3,Ls3h2,Ls3h3の遺伝子発現は検出限界以下で,Ls20ox1とLs20ox2遺伝子は吸水のみで発現し,赤色光処理により発現量は増加しなかったが,Ls3h1遺伝子については吸水に加えて赤色光を処理することにより発現は誘導されることが示された.以上より,この活性型GAを合成する最終段階の酵素遺伝子の発現がフィトクロムにより制御されると考えられた.
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