研究概要 |
VA菌根菌-植物共生系の分子機構解明のためのkey化合物を得ることを目的として,キュウリをモデル植物とし,VA菌根菌Glomus caledoniumの根への感染・共生過程に伴って変動する二次代謝産物を検索した。根のメタノール抽出物酢酸エチル画分,ブタノール画分のTLC,HPLC分析によってVA菌根形成過程で,根の二次代謝産物が質・量的に明確に変動することが明らかとなった。酢酸エチル画分では主に2つの化合物が感染・共生段階が進行するに比例して増加することがわかり,それらを各種クロマトグラフィーによって単離,構造解析を行い,5環性トリテルペン2-hydroxybryonolic acid(D:C-friedoolean-8-en-2β,3β-diol-29-oic acid)と3β-0-trans,cis-ferulyl-D:C-friedooleana-7,9(11)-diene-3β,29-oic acidと決定した。後者のフェルラ酸部分はメタノール中でトランス-シス異性化し,存在比約1:1で平衡化することが分かった。Glomus sp.R10,Glomus clarumとの共生でもこれら2つの化合物は増加したが,キュウリつる割病病原菌であるFusarium oxysporum f.sp.cucumerinumを感染させた根では増加しなかった。これらの化合物はウリ科植物の根に広く存在するbryonolic acidを前駆体として生合成されることが推測されたので,メロン,スイカの根にG.caledoniumを共生させたところ,両植物の共生根において2-hydroxybryonolic acidが顕著に増加することが分かり,本化合物の増加がウリ科植物におけるVA菌根菌共生のよいマーカーとなることが示唆された。現在,本化合物の誘導機構について検討を進めている。
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