研究概要 |
大腸化学発ガン剤である1,2-dimethylhydrazine(DMH)の投与により誘発される大腸部位の初期病変としてaberrant crypt foci(ACF)がある。甜菜食物繊維(SBF)の摂取は強力にDMH誘発大腸がんの発生を抑制することから、SBFの摂取がDMH誘発ACFに対して影響を及ぼすかどうかを検討した。その結果、大腸がんが出来るより早い時期にSBFの摂取がDMH誘発ACFの形成に対して抑制的に作用することが明らかになった。抗アシアロGM1血清in vivo,in vitroでナチュラルキラー活性を強力に抑制することが知られている。我々の以前の研究で、抗アシアロGM1血清をラットに投与することで、DMH誘発ACFが増加すること、即ち、免疫監視機構がDMH誘発ACFの発生に関与していることが示唆された。そこで、SBFのACF抑制効果が抗アシアロGM1の投与によるNK活性抑制の影響を受けるかどうかを検討した。抗アシアロGM1を予め投与した場合には、無繊維食群ではDMH誘発ACFの有意な増加が起こったのに対し、SBF摂取群ではその増加が抑えられることが明らかになった。これらの結果から、SBF摂取によるACF抑制効果は、抗アシアロGM1投与によるACF増加効果を凌駕することが示唆された。
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