これまでに我々が登熟期イネ種子より得られたbZIP型転写調節因子に属するREB cDNAをもとにしてゲノム遺伝子のクローン化を行った。REBと相同性のあるトウモロコシのQpaque-2とそのゲノム遺伝子構造も類似しており、タンパク質をコードしているN末端側約半分は1つの比較的大きなエキソンにコードされていた。また、数百塩基よりなる比較的小さいイントロンがタンパク質をコードしているC末端側に集中していた。さらに、REB遺伝子のプロモーター領域と思われる部分の塩基配列の決定を行い、REB自身が結合する配列が存在していることをつきとめ、REB遺伝子自身の発現がREBによって制御されている可能性が高く、REBが登熟期のイネ種子中での遺伝子発現の制御に重要な働きをしていることが推測される。 また、我々はRT-PCR法およびイネ遺伝子ライブラリーのスクリーニングにより登熟期イネ種子に主に発現している新規のプロテインキナーゼ(REK)cDNA及びゲノム遺伝子を単離した。組織特異性の遺伝子発現をRT-PCR法により調べたところ、葉でも発現がみられた。遺伝子より類推されるタンパク質のアミノ酸配列よりカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼに属するタンパク質をコードしていることが判明した。実際に組み換えタンパク質を調製してカルシウム依存性をin vitroキナーゼアッセイを行って検討したところ、キナーゼ活性がカルシウムの存在下の方が高いことを見出した。登熟期のイネ種子中でのシグナル伝達にREKが密接に関わっているものと思われる。
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