申請者は、成人病に関与する脂質性の食品成分の分子レベルでの役割と作用機構の解明を目指している。一般に、脂質成分の関与する反応の多くは生体膜周辺に存在するタンパク質(酵素)によって達成されるので、これらの研究にとって膜タンパク質の構造と機能の解析は不可欠である。しかしながら、可溶性タンパク質に比べ、膜タンパク質では精製や機能解析の技術はまだまだ困難である。そこで、本研究では、膜タンパク質の機能解析と電気泳動法を用いた精製法の開発と応用を行う。当該年度は、まず始めに、膜タンパク質の機能を解析する方法の研究を行なった。小胞体膜に存在する膜タンパク質であるHMG-CoAレダクターゼは生体内コレステロールレベルが上昇すると調節的に分解される。その分解に関わるプロテアーゼを研究対象として、その活性をモニターする方法を開発した。まずはじめに、細胞から小胞体膜を単離精製し、その小胞体膜を用いて、膜タンパク質であるHMG-CoAレダクターゼのインビトロ系における分解系を確立し、その反応を詳細に解析した。その結果、HMG-CoAレダクターゼを調節的に分解するプロテアーゼは小胞体膜に結合したシステインプロテアーゼの一種であることかが明かとなった。そこで、次ぎに、この膜結合型プロテアーゼの活性をモニターする蛍光ペプチドを検索した。さらに、電気泳動法、メンブランブロット法及び活性測定を組み合わせた膜タンパク質の活性同定法を開発した(Blot-Assay)。その方法を用いて、本プロテアーゼの分子量を同定した。また、本プロテアーゼを可溶化し、等電点電気泳動法と活性測定法を組み合わせた方法によって、その等電点を明らかにした。現在、本プロテアーゼの精製を目指している。
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