樹冠下での集中滴下点発生に対応する、樹冠上での水の動きに伴う諸現象をより詳細に理解するために、昨年度開始した生枝下樹幹流下量観測と林内の風向風速観測を引き続き行った。それに加えて、枝の有無による樹幹流下量の変動と、樹冠通過雨の集中滴下点との対応を観測するため、ボトル25個を一列に配列した林内雨量空間分布観測装置4台を、樹幹流下量を2年以上連続観測している対象木の樹冠下に設置した上で、枝打ちを行い、その前後で樹冠通過雨量、集中滴下点、樹幹流下量の変化を調べた。その結果、生枝下樹幹流下量は周辺の木の樹幹流下量から推定されたその木の本来の樹幹流下量と比べて多く、その差は降雨量に比例して大きくなることがわかったが、その現象に対応して、枝打ちをした木では樹冠通過雨量が幹から遠ざかるにつれて減少し、枝打ちしない木では逆に樹冠通過雨量が幹から遠ざかるにつれて増加していることがわかった。すなわち、枝打ちの影響は、幹での貯留ではなく、樹冠通過雨量の空間分布の差として現れることがわかった。これらの観測の結果蓄積されたデータに加え、通年観測されている林内外雨量データ、樹幹流下量データ、集中観測された樹冠通過雨量分布データ、集中滴下点データをパソコンに入力して整理することにより、小プロットにおける年間の樹冠遮断雨量が試算され、樹冠遮断蒸発量が降雨イベント別に求められ、降雨パターンや風速への依存性が明らかになった。以上の成果は日本林学会および水文・水資源学会で口頭発表した他、論文投稿を準備中である。
|