研究概要 |
東南アジアにおける造林樹種である早成樹のうち,まずGmelina arboreaについて,土壌の硬さと根系の発達の関係を調べた。塩化ビニル製の円筒内に作成した圧密土層上で芽生えを,温室内で5ヶ月余育成したところ,山中式硬度指数で25cm以下の圧密土層上で育成した場合は,ほぼ同様の成長経過を見せたが,同指数30cmの土層上では次第に成長速度が鈍り樹高成長が最も悪い結果となった。土層内の根系を調べたところ,土壌が硬くなるにしたがって表層の柔らかい土層と圧密土層の協会まで根系が達するとそこから水平方向に向きを変えて伸長する根が多く根系が表層部分に集中する傾向があった。同指数30cmの圧密土層内にはほとんど根系の発達が観察されず,根の侵入できる堅さの限界を上回っていたものと考えられる。圧密土層による根系の発達が抑えられた結果,地上部の成長も抑制されたのであろう。Melaleuca cajuputiとAcacia mangium,Paraserianthes falcatariaについても,圧密土層の大きさを小さくして同様の実験をおこなった。いずれの種も土層が堅密であるほど,根系が土層を貫通するのに長い時間を要したが,Melaleuca cajuputiが硬い土層でも最も短い時間で貫通した。すなわち3種の中ではMelaleuca cajuputiは硬い土壌内で根系を発達させる能力が最も高いといえよう。 圧密土層への貫入能を詳細に明らかにするために,目の細かい篩上に芽生えを植え,根の篩目の貫通を調べたところ,Melaleuca cajuputiの根は最も細かい53μmの篩目をも貫通した。より狭く細い孔隙でも根を貫入させることが,粗孔隙の少ない堅密な土壌内に根系を発達できる能力の一部であることを示唆している。 熱帯地域での造林技術の確立を念頭におき,水分条件や光条件を変えた際に,根の堅密土層への貫入能がどのように変化するかを明らかにするべく,新たな実験を準備している。
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