我が国における森林資源は、昨今の木材価格の低迷に伴い十分に管理されない状態になりつつある。これは、これまでの木材価格の変動が引き起こす将来的な不安定要素は森林所有者の経営意欲をそいだ結果と言える。こうした将来的な不安定要素が存在するにもかかわらず、森林資源の評価には、未だに現在価値基準によるものが用いられている。現在価値基準を用いる限り、例えば将来的な価格の上昇などと言った可能性を経営の意思決定フレームワークに考慮することができない。 森林資源を取り巻く将来的な不確実要素には、木材価格のみならず、森林資源の成長に関するものなどがある。森林資源の成長は、例えば微気象の変動、樹木間の競争の変化、また人為的作業の介入による成長の変動等に大きく左右され、将来的に不確実になる。 本研究では、木材価格と言った経済要素並びに森林資源成長の将来的な不確実性を考慮できる最適森林利活用を探求できる最適確率制御システムを構築することを目的としている。本年度の研究は、木材価格の不確実性現象に対し、非線形確率微分方程式によるモデルを構築し、それらのモデルのパ-フォマンスについて分析を行い、モデル選択の重要性について検討した。その結果、対象とする価格によって最適なパ-フォマンスを示すモデルが異なることがわかり、最適確率制御システム構築にあたり、どのモデルが有効なのか調べる必要があることが分かった。来年度はさらに、分析を進め、森林資源成長の不確実性のモデル化を試みる。また、価格・成長の2要因を対象にした多変数確率動的計画法による最適確率制御システム構築を試みる。
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