研究概要 |
沖縄本島北部のマングローブにおいて、1994年11月、メヒルギKandelia candelに枝枯性病害が見出され、罹病組織からCryphonectria sp.(Endothiella sp.),Botryosphaeria sp.(Dothiorella sp.),Pestalotiopsis sp.が、高頻度で分離された。この3種の菌株について、接種試験を行ったところ、E.sp.は高い病原性を示し、接種後1カ月以内に高率でメヒルギ苗の枯死に至った。D.sp.でも病徴の形成・進展が認められた。一方、P.sp.は顕著な病原性を示さなかった。琉球列島における、本病害の分布を調査したところ、鹿児島県の屋久島(1)および種子島(2)、沖縄県の沖縄島(13)、宮古島(4)、伊良部島(1)、石垣島(1)、西表島(3)(カッコ内は調査地の数)のマングローブのすべてで本病害の病徴が認められ、罹病枝にE.sp.の標徴を認めた。E.sp.は、野外のメヒルギ罹病木上に、1年を通じて分生子殻を形成したが、1,2,8月には分生子殻の形成は他の月よりも少ない傾向にあった。PDAおよびMA培地上では、25-30℃で最も菌叢の成長が促進された。E.sp.を、オヒルギBruguiera gymnorrhizaおよびヤエヤマヒルギRhizophora stylosaの実生に接種したところ、条件によっては両樹種に病徴を形成したが、自然条件下では、両樹種の枯死枝からE.sp.が分離されたり、標徴が認められたことはなかった。 さらに、沖縄本島北部のマングローブにおいて、1997年11月、オヒルギに枝枯性の病害が見出された。被害組織からTympanis sp.と疑われる糸状菌が分離され、接種試験の結果、本菌株がオヒルギに病原性を示した。
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