木質接合部の初期「あそび」の挙動を実験的に明らかにすることを目的として、実大サイズのモーメント抵抗型集成材接合部試験体に対して動的載荷試験、静的載荷試験を実施し、製材によるボルト接合の二面せん断試験を行った。その結果、以下のような結論が得られた。 (1)アペルリングを用いた接合部が初期剛性、最大耐力とも、ボルト接合部よりも最も大きな値を示した。初期「あそび」のないボルト接合部が破壊時の変形量は最大となった。これに対して、「あそび」を有する接合部は微小荷重時の摩擦による初期剛性は「あそび」が無いものやアペルリング接合部にも匹敵するほど大きい値を示したが、その後荷重0.6〜0.7tf付近で剛性が大きく低下したものの、1〜2ft付近では「あそび」が無いものと同程度の2次剛性を発揮した。しかし、最大耐力は「あそび」が無いものに及ばなかった。 (2)荷重-スリップ曲線の「あそび」区間に傾きがあるものとして近似すると、実際に試験体に存在した初期「あそび」量より大きく算出された。これに対して、同曲線の「あそび」区間に傾きがないものとして近似すると実際に有する「あそび」量に近づいた。 (3)隣り合う接合具間の表層ひずみには明確な包絡線を得ることができず、顕著な傾向は読みとれないものの、アペルリングの接合部では実際にせん断抵抗を発揮しているアペルリングが側材表面にないためか、ひずみが引張側に発生する場合の方が圧縮側に発生する場合よりも多い。これに対してボルト接合部では、圧縮ひずみが発生する場合と引張ひずみが発生する場合の割合は比較的均衡していることがわかった。 (4)スイ-プ強制振動を与えた結果、側材の片持梁曲げ振動と接合部の回転振動に基づく共振点が確認された。接合部の初期「あそび」が存在する場合、ボルトの締め付けトルクを緩めるとほぼ等しい振動モードを与える共振周波数は低下し、動的変位は大きくなることが明らかになった。 (5)接合具単体の二面せん断試験においては、初期「あそび」の有無は最大耐力に差異を与えないが、初期のすべり量はあそび量に単純比例せず、ある確率分布をなすことがわかった。 以上の結果が新規性および有用性に富むと判断されたので、第47回日本木材学会大会(1997年4月、高知)において発表した。
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