研究概要 |
木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumの二次代謝産物Veratryl alcohol(VA)の蓄積が、培地へのフェニルアラニン(Phe)添加により阻害される機構を明らかにするために、Phe、またNH_4Clを窒素制限培地に添加し、アンモニア同化酵素(L-Glutamate:NADP+oxidoreductase,EC1.4.1.4,(GDH)とL-Glutamate:ammonia ligase,EC6.3.1.2、(GS))、の活性変動の違いを明らかにした。 Pheの添加は、アンモニア同化酵素(GDH,GS)の活性を無添加の場合に比べやや減少させた。即ち、Phe無添加の培養で、GSは培養5日目から7日目にかけて、1.3nkat/mg proteinから3.53nkat/mg proteinに増加した。Phe添加の系に於いても、培養7日目に2.9nkat/mg proteinに達した。しかし、NH_4+を添加した系では、GSの活性レベルは添加後3日間は変わらなかったが、培養5日目から7日目にかけて1.1nkat/mg proteinから0.3nkat/mg proteinに減少した。一方、GDHにおいても、無添加の系では、培養5日目まで減少し0.35nkat/mg proteinになったが、そこから培養7日目にかけて、1.8nkat/mg proteinまで増大した。1.2mMPhe添加の場合でも同様に減少し、培養7日目で増大した。しかし、NH_4Cl添加の系では、GDHの活性は減少し、培養7日目で0.67nkat/mg proteinに減少した。 以上の結果から、同菌では、二次代謝と同期してGS,GDHの活性が増加することが解った。さらに、Phe、NH_4+はGS,GDH活性の増大を阻害することにより、VA蓄積が阻害されることが示唆された。しかし、Phe、NH_4+添加が二次代謝時に、GS,GDHの活性を下げる機構に関しては今後の検討が必要である。
|