昨年度に引き続き、木材の内部診断装置開発のための基礎実験として、木材腐朽菌による接合材の生物劣化実験をおこなった。 木材腐朽菌には、ナミダタケ(Serpula lacrymaus)とオオウズラタケ(Tyromyces palustris)の2種類の褐色腐朽菌を用いた。これらの木材腐朽菌は、日本において実際に木造建築物に被害を与えている菌である。これらの菌は木材中のセルロースの分解力が大きく、重量減少が少なくても強度の低下に多大な影響を与えるという特徴がある。したがって腐朽初期における発見が難しく、早期発見のための方法が求められている。 接合材には、材長40cm、断面120mm×120mmの2本の木材をT字接合したものを用いた。接合の種類は、ほぞ接合、ほぞと釘とによる接合、ほぞと金物による接合の3種類である。 上記の接合材に木材腐朽菌を植えつけ、恒温恒湿室内に温度20℃、相対湿度100%の条件で劣化させた。 菌を植えつける前の状態をコントロールとし、6か月後および12か月後に各種の測定をおこなった。測定の内容は、1)重量測定、2)目視および写真撮影による木材腐朽菌の生長の観察、3)伝播音の測定、である。伝播音は、接合材の一端に加速度ピックアップを取り付け、接合部を通る他の一端をインパルスハンマで打撃することにより測定した。 測定した打撃音および伝播音をデータレコーダに記録し、パーソナルコンピュータに取り込んで解析をおこなった。伝播音の速度・波形・スペクトルに対する木材腐朽菌による生物劣化の影響については現在も解析中である。
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