研究概要 |
ホタテガイの中腸腺は、肥料・飼料としての有効利用の可能性があるにもかかわらず、カドミウムが高濃度に含まれていることが問題となっている。本研究では、魚介類に濃縮される金属の濃縮機構をホタテガイに濃縮されるカドミウムを例にとり解明することを目的とした。 噴火湾を実験水域として森沖のホタテ養殖施設内の2点と養殖が行われていない湾内の定点において6月から11月にかけて計11回の調査を行った.調査は,水温,塩分,栄養塩,ホタテの餌量を推定するための基礎生産量,懸濁態粒状有機炭素・窒素について行われた.また,同時に海水中とプランクトン中のカドミウムの測定もおこなった.本年度明らかにされた主な点は,以下の点である.(1)水温,塩分,栄養塩等からみた海洋環境は,養殖施設内と対象点では,周年変化において大きな違いは,観測されなかった.(2)しかし,基礎生産量は,養殖施設内で一年を通して高い値が観測され,他の地点と大きく異なった.このことは,施設内での物質循環様式の違いか陸水の影響の違いのいずれかを反映しているものと思われる.(3)また,植物プランクトン中のカドミウムは,春から夏にかけ増加し,ホタテガイの中腸腺内のカドミウム含量も同様に増加傾向を示した.この植物プランクトン中のカドミウム濃度の変化は,珪藻類からうず鞭毛藻へのプランクトン種の遷移と生理状態の変化によるものと推定された.このことは,ホタテガイへのカドミウムの濃縮が海洋環境と食物連鎖網との密接な関係によって行われていることを示唆している.
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